鉄フライパンには、厚さ(重さ)の選択肢があります。
家庭で使うことを意識する必要があります。
厨房と台所では調理環境が異なりますので、同じ基準で選んでしまうと「使い難い(振りにくい、洗いにくい、温まりにくい)」などの問題が生じやすくなります。
特に注目して欲しいのが厚さ(板厚)です。
鉄フライパンには「薄いもので1.6mm前後」「厚いものだと3.0mm以上」の違いがありますので、購入時にはチェックしておくことをおすすめします。
以下、板厚の違い(重さの違い)について説明します。
板厚と温まりやすさ
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厚板フライパンは、おすすめしません。
鉄フライパンは、熱容量の大きなフライパンです。
熱容量とは「フライパンが蓄えられる熱(エネルギー)量」のことであり、鉄は密度と比熱の高い素材であるため(たとえばアルミフライパンと比べると)熱容量が高くなります。
基本的に、「重い=熱容量が高い」と考えてもOKです。
鉄フライパンは、熱して使います。
十分に温めてから使い始めることで(摩擦係数が低くなるために)くっついたり焦げ付いたりするリスクを軽減することにつながるためです。
このため、厚板フライパンは待ち時間が長くなります。
業務用コンロであれば気にならない場合であっても、家庭用コンロで厚板フライパンを温めるための「待ち時間」が長くなるのです。
正直、ストレスに感じてしまうはずです。


鉄フライパンの熱伝導率
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鉄は、熱ムラのできやすい素材です。
一般的に、鉄は「熱伝導率の良い素材」として認識されています。
しかし、実際には「ステンレスよりは良いが、他の素材と比べれば(さほど)良いものではない」という現実があります。
- 熱伝導率(w/m・k)
- 銅:386.00
- 鉄:67.00
- アルミ:204.00
- ステンレス:16.00
熱伝導率とは、熱の伝わりやすさです。
熱伝導率が良いと「全体が素早く(均一に)温まりやすい」という特徴を持ち、熱伝導率が悪いと「温まりにくく温度差ができやすい」という特徴を持つことになります。
「板厚は関係ないのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、薄板であれば少し位置をズラしただけでも熱ムラが解消される場合であっても、厚板では位置をズラした後にも加熱時間を長くとらなければいけません。
鉄フライパンの使いやすさは、ガスコンロの熱量に影響を受けるのです。

重いフライパンの利点と欠点
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鉄フライパンの重さには、利点と欠点があります。
たとえば、重さと熱容量は(ほぼ)イコールですので「重いフライパン=ハンバーグなどが美味しく焼ける」ことになります。
しかし、家庭用ガスコンロでは取扱いが面倒です。
調理道具選びは、バランスが大切です。
業務用コンロであれば厚板鉄フライパンがベストな場合であっても、家庭用コンロの場合には「(多少)板厚の薄いものを選ぶ」ことがベストな選択となる場合もあります。
たとえば、遠藤商事と中尾アルミ製作所。
上記は、はじめての鉄フライパンで選ばれることの多い2社かと思いますが、前者が板厚2.3mm、後者が板厚1.6~2.0mmという違いがあります。
以下は、26cm鉄フライパンでの重さの比較です。
- 遠藤商事(2.3mm):1335g
- 中尾アルミ製作所(2.0mm):1150g
185gの違いがあります。
「たったの185g?」と思われるかもしれませんが、使い勝手の点では確実に後者に軍配が上がります。(※両方とも使っていますが、使用頻度の差は歴然です)
汎用性の高さを意識することをおすすめします。
「何を作ることが多いのか?」「コンロの熱量はどうなのか?」「筋力はあるのか?」など、複数の選択基準からバランスの良い板厚を選ぶことこそが大切だと感じています。
事実、私事ではありますが(徐々に)キング鉄フライパンに買い替えています。
まとめ
鉄フライパンには、板厚の違いがあります。
「厚ければよい」「薄ければよい」といった単純な問題ではなく、使用環境や使用用途によって変化する問題となります。
もし、「複雑すぎて分からない」ようであれば、(個人的には)まずは中尾アルミ製作所のキング鉄フライパンをおすすめします。