バターには、無塩バターと有塩バターがあります。
これらの違いは「塩分の有無」であり、一般的な有塩バターには(食塩相当量として)100gあたり1.9gの食塩が含まれています。
「たった1.9g/100g」と思われるかもしれません。
しかし、この塩分が「レシピによっては味に影響する」「グルテンの構造を引き締めて粘弾性を高める」などの作用を持つことになります。
お菓子にづくりに無塩バターが好まれるのはこのためです。
影響力の大きな食塩
食塩は、影響力の大きな調味料です。
調理の仕上げに「塩を少々」加えるだけでも、料理(または食材)の印象が大きく変わることは経験的に知っているはずです。(関連記事:少々とひとつまみの違い)
レシピに無塩バターが指定されていることは少なくありません。
これは「食塩の味への影響力が大きい」ことと、(次項で詳しく説明しますが)「グルテンの性質への影響力が大きい」ことが関係しています。
影響力の大きな調味料ほど、慎重に扱わなければなりません。
食塩の持つグルテンへの影響力
食塩は、グルテンの粘弾性を高めます。
グルテンの性質は、副材料に影響を受けます。
具体的には「アスコルビン酸を加えると硬化する」「サラダ油を加えると軟化する」「バターを加えると弱化する」などの性質があり、食塩を加えても硬化することになります。
- 硬化:グルテンの粘弾性が増す
- 軟化:グルテンが柔らかくなる
- 弱化:グルテンがもろくなる
多くの焼き菓子には、無塩バターが指定されます。
これは焼き菓子に「柔らかさ」や「もろさ」が求められることが多いためであり、有塩バターを使用すると粘弾性が増してしまうために食感の変化が起こってしまうためです。
このため、お菓子作りには無塩バターが欠かせません。
経時劣化する風味への影響力
有塩バターには、「風味が変化しにくい」という特徴があります。
バターは香りが重視されます。
しかし、脂肪の塊であるバターは「油の悪くなった臭い(酸敗臭)の生じやすい食材」でもありますので、品質や鮮度が重視されます。
食塩には、食材の保存性を高める作用があります。
これは浸透圧の関係で「食材や細菌の細胞内から水分が抜ける」ためであり、水分が抜けることによってバターの風味も保たれやすくなります。
これによって脂肪酸の酸化も起こりにくくなります。
無塩バターは、早めに使い切ることがポイントです。
ただでさえ(有塩バターよりも)香りの劣化が起こりやすいという特徴を持ちますし、無塩バターが指定されているレシピの多くは「バターが主役になるような料理」であるはずです。
まとめ
無塩バターと有塩バターは使い分けられます。
一般的な料理には有塩バターが使われますが、小麦粉を使ったお菓子などには(グルテンの性質への影響力を考慮して)無塩バターが好まれます。
また、無塩バターは品質が高い傾向にあります。
これは「バターが主役になる料理に使われることが多い」ことや「食塩を加えないことで消費期限が短くなる」ことなどが関係しています。
そのため、無塩バターの値段は(多少)高くなります。