パンは、種類によっては焼成前に霧を吹きます。
パン生地表面を霧吹きで湿らせておくことによって、焼成中の膨らみ(カマ伸び)の邪魔をしないためのテクニックです。
カマ伸びが最終的なボリュームを決定します。
湿らせておかなければ、膨らみません。
特にリーンな生地ではその傾向が顕著であり、霧を吹いておかなければ(カマ伸びが阻害されるために)ボリュームが小さくなりがちです。
好みの差はありますが、適量の霧を吹いておくことにはメリットがあります。
ボリュームが大きくなる仕組み
パンは、カマ伸びします。
カマ伸び(oven spring)とは「焼成中に膨張して一回り大きくなること」であり、最終的なパンの形はカマ伸び後の形となります。
最終発酵時には形がよくても、焼いてみると微妙なことってありますよね?
生地表面を湿らせておくと、カマ伸びを阻害しません。
焼成中に膨張するカマ伸びは、表面が早くに固まってしまっては膨らむことができずに重い口当たりになってしまいます。
それを避けるためにも、霧吹きで湿らせておきます。
表面を湿らせておくことでクラストの形成を遅らせることができますので、理想的なカマ伸びの後にクラストが形成されるように調節するわけです。
ちなみに、スチーム機能付きのオーブンでも同様の効果が得られます。

クラストの食感が変化する理由
一般的に、霧吹きはリーンな生地に対して行います。
リーンな生地とは、油脂などの少ない生地です。
油脂には「パン生地の伸展性を良くする」などの働きがありますので、リッチな生地の場合は表面を湿らせておかなくても極端にカマ伸びが阻害されることはありません。
もちろん、リッチな生地に対しても霧を吹くことがありますし、表面に塗ることのある溶き卵には(霧吹きほどではありませんが)同様の効果があります。
しかし、問題となるのはリーンな生地です。
リーンな生地には「伸展性に乏しい」という特徴がありますので、そのまま焼成したのでは早くに表面が焼き固まってカマ伸びを阻害してしまします。
そのようなパンは、クラストが厚くなります。
クラストが厚くボリュームに乏しいパンができますので、リーンなパン特有の「素朴な感じ」に拍車がかかることになります。
好みの問題ではありますが、素朴感が強すぎて物足りなく感じられるはずです。


まとめ
霧吹きで表面を湿らせておくと、膨らみやすくなります。
パンの最終的な形は、カマ伸び後に決まります。
カマ伸びとは「焼成中に膨張して一回り大きくなること」であり、カマ伸びを阻害してしまうとボリュームが小さくクラストの厚いパンに焼き上がります。
好みの問題ではありますが、一般的には表面を湿らせる(もしくはスチームする)ことでカマ伸びが阻害されてしまうのを防いでいます。