パン生地には、砂糖を加えることがあります。
もちろん、砂糖を加えなくてもパンを作ることはできるのですが、砂糖を加えることでいくつかのメリットを享受することができます。
また、砂糖の種類による違いもあります。
砂糖は、パン生地への少なくない影響力を持ちます。
上手く使えば「パンの味や見た目の底上げをしてくれます」が、使い方を間違えると「焦げやすくなったり膨らまなくなったりする」こともあります。
砂糖の効果を理解しておくことがポイントとなります。
砂糖の種類による甘味の違いは?
砂糖を加えると、甘味が加わります。
当たり前ですよね?
しかし、砂糖の甘味には種類による違いがありますので、グラニュー糖を加えた場合と上白糖を加えた場合とでは異なる香味が生じることになります。
意外と大きな違いが生じます。
- グラニュー糖:癖のないあっさりとした甘味
- 上白糖:コクのある後を引く甘味
この違いは、転化糖(ビスコ)の有無によるものです。
転化糖とは、ブドウ糖と果糖の混合物です。
ビスコとも呼ばれることのある転化糖は「濃厚な甘味」であることが特徴であり、グラニュー糖(ショ糖99.95%)よりも後を引く甘味に感じられます。
「どちらが良い?」という問題ではなく、好みの問題です。

イースト(発酵)への影響
パン生地は、イーストで発酵させます。
パン作りにはイースト菌の持つ「有機化合物を分解してアルコールと炭酸ガスを生成する」という特徴が利用されています。
イーストの餌となるのが、ブドウ糖です。
イーストはブドウ糖を消費してアルコールと二酸化炭素を生成し、生成された二酸化炭素(炭酸ガス)によってパン生地が膨らむことになります。
ブドウ糖→アルコール+二酸化炭素
この際、少量の砂糖を加えておくとイーストの栄養源になります。
イースト菌はマルトース分解酵素を持っていますので砂糖を加えなくても麦芽糖を分解してブドウ糖にするのですが、砂糖を加えておくことで発酵がスムーズに進みやすくなります。
しかし、イーストの種類には注意が必要です。
インスタントドライイーストには「低ショ糖型」と「高ショ糖型」がありますので、低ショ糖型のイーストに多量の砂糖を加えてしまうとパン生地が膨らまなくなります。

焼き色がつきやすくなる理由
砂糖を加えると、焼き色がつきやすくなります。
リーンなパンは、焼き色がつきにくいものです。
これは、パンの焼き色がメイラード反応によるものであるためであり、メイラード反応にはアミノ酸と還元糖が不可欠ですのでリーンなパンにはなかなか焼き色がつきません。
砂糖(ショ糖)は熱と酸によってブドウ糖と果糖に分解されるため、小麦粉に含まれるアミノ酸と組み合わさることで焼き色がつきやすくなる(メイラード反応が促進される)ことになります。
ちなみに、グラニュー糖よりも上白糖の方が早く焼き色がつきます。
上白糖には、転化糖が噴霧されているためです。
上白糖に噴霧されている転化糖とは「ブドウ糖と果糖の混合物」ですので、メイラード反応が促進されて焼き色がつきやすくなります。
早くに焼き色を付けたい場合には上白糖が好まれます。

しっとりして硬くなりにくくなる?
パンは、内部温度を95~96℃にして焼き上げます。
内部温度を高くすることによって(澱粉の糊化に必要であった)余分な水分を蒸発させてふっくらと仕上げるためです。
この際、砂糖が配合されているとしっとりした焼き上がりになります。
砂糖には保水性があります。
砂糖の保水性はパンの焼き上がり時にもある程度の水分を引きつけて離しませんので、適度な水分量を残してくれることになります。
また、賞味期限の問題もあります。
賞味期限とは「美味しく食べられる期限」のことですので、パンの水分量が低下して硬くなってしまうようであれば賞味期限切れということになりますよね?
砂糖の保水性は、焼成後でも有効に働きます。
砂糖の配合されているパンは「砂糖は水に溶けた状態で澱粉の構造の間に入り込んでいます」ので、澱粉の老化(β化)により硬くなってしまうことを防いでくれます。
砂糖は、美味しく食べられる期間をも延ばしてくれるわけです。

まとめ
パン生地には、砂糖を配合することがあります。
砂糖を加えることで「甘味が加わる」「イーストの栄養源になる」「焼き色がつきやすくなる」「保水性がある」などのメリットが得られるためです。
基本的には、グラニュー糖が用いられます。
これは、欧米には上白糖がないためであり、どちらの入手も容易な日本国内におきましては「特性を理解した上で使い分ける」ことがポイントとなります。