卵焼きをふわふわにするには、いくつかの方法があります。
ここでは、普通の卵焼きについて考えていきます。
普通の卵焼き(卵、砂糖、塩のみ)とした場合、砂糖が増えるほどに「柔らかくなる傾向」があり、塩が増えるほどに「固くなる傾向」があります。
これは、砂糖や塩に「タンパク質の熱変性」への影響力があるためです。
ちなみに、だし巻き卵には砂糖を加えません。
家庭用のレシピでは砂糖を加えることもありますが、本来のだし巻き卵の場合には「だしの量が多い」ために砂糖を加えなくても柔らかく焼きあがります。
以下、詳細の説明です。
塩を加えると卵焼きが固く焼きあがる理由
塩分量の多い卵焼きは、焼き上がりが固くなります。
タンパク質は、熱によって凝固します。
卵の場合ですと「卵白が60℃以上」「卵黄が65℃以上」で熱凝固することになり、約80℃に達する頃には全体が固まります。(関連記事:卵の熱凝固温度)
タンパク質の熱凝固は、食塩によって早まります。
この作用は、多くの料理に利用されています。
たとえば、肉や魚に塩をふってから焼きますと、タンパク質の熱凝固が早く進むことにより「うま味を閉じ込める」「形が崩れにくくなる」などのメリットが得られます。
しかし、卵焼きの場合にはマイナスになる可能性があります。
タンパク質の熱凝固が早く進むということは「固くなりやすい」ということでもありますので、卵焼きを柔らかく仕上げたい場合には加減する必要があるのです。
砂糖を加えた卵焼きが柔らかくなる理由
砂糖には、タンパク質の熱凝固を妨げる働きがあります。
タンパク質の熱変性は、「タンパク質の分子がいったん分かれ、再結合することで固まる」のですが、そこに砂糖がありますと「別れた分子に砂糖が結びつくことで、タンパク質同士の再結合を妨げる」ことになります。
甘い卵焼きが固くならないのは、このためです。
本格的なだし巻き卵に砂糖を加えない理由
だし巻き卵には、砂糖を加えません。
もちろん、本格的なレシピでの話です。
家庭用のレシピでは「卵3個に対して50ml前後のだし汁」を加えますが、本格的なレシピでは「卵3個に対して120ml前後」のだし汁を加えることになります。
そのようなレシピでは、砂糖を加えません。
砂糖を加えてしまうとタンパク質の熱変性が阻害されてしまいますので、ただでさえ巻きにくいだし巻き卵が「巻けなくなってしまう」ことになります。
そもそも、「卵3個に対して120ml前後」というのは、砂糖を加えなくても素人では巻けません。(※当然、私も巻けませんし、何度トライしても失敗しています)
まとめ
卵焼きは、砂糖を加えることで柔らかく焼きあがります。
これは、砂糖がタンパク質の熱凝固を妨げるためであり、砂糖の食塩のバランスによって「固くするのか?」「柔らかくするのか?」をコントロールできます。
葛粉(または片栗粉)などによる方法もありますが、基本は砂糖と食塩のバランスによってコントロールされています。