パン作りには、主に強力粉を使います。
強力粉とは硬質小麦の胚乳部分を粉にしたものであり、グルテンの形成に必要な小麦タンパクを豊富に含むことからパン作りに好まれています
全粒粉とは、硬質小麦全体を粉にしたものです。
胚乳だけを粉にしている強力粉とは違い、「胚乳、胚芽、外皮(ふすま)」という小麦粒全体を挽いていますので、強力粉よりも栄養価が高いことが特徴です。
もちろん、独特の香味もあります。
お米をイメージしてもらえれば分かりやすいかと思います。
精白米を粉にした上新粉に当たるものが「小麦粉」であり、玄米を粉にした玄米粉に当たるものが「全粒粉」となります。
小麦粉と混ぜて使う理由
全粒粉は、小麦粉に混ぜて使用します。
もちろん、全粒粉のみでもパンを作れないことはありませんが、全粒粉だけで作られたパンは「膨らみが悪く個性の強すぎる味」になります。
火の通りが悪くなることも欠点のひとつです。
また、全粒粉には独特の風味があります。
そのため、全粒粉パンは粉の3割ほどを全粒粉に置き換えることで作られ、田舎パン(カンパーニュ)などには1割ほどの全粒粉が用いられることが多くなります。
お米で言うと、7分づき米や胚芽米のようなイメージです。
全粒粉の膨らみが悪い理由
全粒粉は、パンの膨らみを悪くします。
パンが膨らむのには、グルテンの膜が重要です。
グルテンとは小麦タンパク(グリアジンとグルテニン)に水を加え、物理的な力を加えることによって粘弾性を帯びた網膜組織を形成させたものです。
このグルテンの膜が炭酸ガスを包み込むことで膨らむようになります。
しかし、全粒粉はグルテンの膜を分断させます。
全粒粉には硬い外皮が含まれており、外皮(ふすま)の鋭利な破断面がグルテンの膜を分断させてガスを保持できないようにしてしまうためです。
そのため、全粒粉の割合が多くなるほどにパンの膨らみは悪くなります。
まとめ
パン作りには、全粒粉を使うことがあります。
しかし、全粒粉には「パン生地の膨らみが悪くなる」「独特な風味を持つ」などの特徴がありますので、小麦粉に混ぜて使うのが一般的です。
全粒粉は栄養価の高い食品ですが、いくら栄養価が高いからと言っても「パンの味(食品としての価値)を極端に落としてしまう」のでは意味がありませんので、粉の3割(場合によっては5割)ほどが上限になるかと思われます。