パン作りには、ライ麦粉を使うことがあります。
基本的に、ライ麦粉単独では使いません。
ライ麦には「グルテンを形成しない」という特徴があるため、ライ麦単独ではイースト菌が生成する炭酸ガスを保持することができないためです。
また、ライ麦を加えると重いパンになります。
これにはグルテンを形成しないために生地が膨らみにくい(膨らまない)ということに加え、吸水率が高くベタベタと柔らかなテクスチャーになるためです。
以下、詳しく説明していきます。
生地が膨らまない仕組み
ライ麦パンは、クラムが詰まっていることが特徴です。
パンは、グルテンの粘弾性を利用して膨らみます。
しかし、ライ麦にはグルテンを形成するグルテニンとグリアジンが含まれていませんので、グルテンによる気泡を包み込む仕組みが成り立ちません。
ライ麦粉単独では、パン生地が膨らまないのです。
そのため、小麦粉と混ぜて使用します。
小麦粉単独よりもパン生地の膨らみは悪くなりますが、ライ麦独特の豊かな風味が加わることになりますので、ハード系のパンには好まれます。
ライ麦パンは、ドイツをはじめとした北ヨーロッパで人気の高いパンです。
クラムがしっとりする仕組み
ライ麦を加えると、しっとりしたパンになります。
「しっとり」という表現が正しいかは微妙ではあるのですが、吸水量が増えるためにベタベタとした軟らかなクラムになります。
これには、ペントサン(アラビノキシラン)が関係しています。
ライ麦には、粘着性のある炭水化物が含まれます。
この炭水化物こそがペントサン(アラビノキシラン)であり、ペントース(五単糖)で構成される高分子の炭水化物です。
ライ麦には、7%ほどのペントサンが含まれます。
ペントサンは、吸水率が高いことが特徴です。
ペントサンの30~40%は水に溶解してコロイド状になり、その際、重量の約10倍の水を取り込むことが確認されています。
そのため、ライ麦パンは水分量の多い重量感のあるパンになります。
まとめ
パン作りには、ライ麦粉を使うことがあります。
しかし、ライ麦単体では(グルテンを形成することができないために)パンはつくれませんので、小麦粉とブレンドして使用することになります。
ライ麦パンの特徴は、豊かな風味と水分量の多さです。
そのため、軽くふっくらしたパンには用いられませんが、田舎パン(カンパーニュ)のようにリーンなハード系のパンには好まれる傾向にあります。
個人的には、大好きです。