パン作りには、パンチという行程があります。
パンチとは発酵途中の生地を「平らに叩いて押しつぶしてから簡単に三つ折り(または四つ折り)にして発酵容器に戻す」ことです。
パンチは、ガス抜きとも呼ばれます。
パンチには、3つの目的があります。
それが、「生地中の大きな気泡をつぶす」「グルテン組織を強化する」「イースト菌の活性を高める」という3点です。
パンチの工程は、意味があってのことなのです。
大きな気泡をつぶす理由
パン生地は、イースト菌により膨らみます。
イースト菌は生地中のブドウ糖からエタノールと炭酸ガスを生成しますが、生成されたエタノールと炭酸ガスは生地中に気泡をつくります。
C6H12O6→2C2H5OH+2HO2
そのまま焼成してもパンになります。
しかし、大きな気泡が残ったままでは「きめが粗く舌触りの悪いパン」になってしまいますので、パンチによって大きな気泡を追い出します。
パンチとは、ガス抜きのことです。
パン生地(パン生地の内層部分)には発酵による大小さまざまな気泡ができますが、パンチによって内層部分のきめが細かくなります。
内層部分のきめを細かくするためにパンチをするというわけです。
グルテン組織が強化される理由
パンチをすると、グルテン組織が強化されます。
グルテン組織は、パンの骨格を成しています。
グルテンの抗張力があるからこそイースト菌の生成するエタノールや炭酸ガスが生地中にとどまり膨らむのであって、グルテンが弱ければ膨らみません。
グルテン組織は、刺激によって強くなります。
これは、グルテンに物理的な力が加わることで「グルテン膜の網目が細かくなり伸展性がでてくる」ためであり、そのような生地はガスを逃さず膨らみやすくなります。
パンチ(ガス抜き)は、パンを膨らませるためにもひと役買っています。
イースト菌が活性化する理由
発酵パンは、イースト菌により膨らみます。
パン生地が膨らむのはイースト菌の生成するエタノールや炭酸ガスをグルテンの膜が保持するためですが、1次発酵の時点でのイースト菌は十分な量ではありません。
そこで、パンチをしてガス抜きをします。
エタノールと炭酸ガスを放出して新たに空気中の酸素を混ぜ込むことでイースト菌の活性が高まり、炭酸ガスの発生量が大きくなるためです。
イースト菌の活性が高まると、当然、パンの膨らみも良くなります。
また、発酵による香味の問題もあります。
イースト菌はエタノールや炭酸ガスをはじめとした様々な成分を生成しますので、よく発酵させたパン生地には特有の香味が加わることになります。
そのため、美味しいパン作りにはイーストの活性化が不可欠なのです。

まとめ
パン作りには、パンチの工程があります。
パンチとはガス抜きのことであり、これによって「生地のきめが細かくなる」「グルテンの抗張力が強化される」「イーストの活性が強まる」などの効果が得られます。
よって、作りたいパンの特徴によっては「パンチの回数」が変化することもあります。