鉄フライパンは、空焼きします。
フッ素樹脂(テフロン)加工のフライパンを使い慣れていると「ゾッとしてしまう」ことではありますが、鉄フライパンを空焼きするのには理由があります。
鉄フライパンの空焼きには、大きく2種類があります。
「錆止め塗装を焼き切るための空焼き(もしくは酸化被膜を形成させるための空焼き)」と「油をなじませるための空焼き」です。
どちらも、欠かすことのできない空焼きです。
錆止め剤を焼き切るための空焼き
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鉄フライパンには、錆止め塗装が施されています。
鉄は錆びやすい素材ですので、工場から出荷されて手元に届くまでの間に錆びてしまわないように錆止め塗装が施されています。
錆止め塗装にはいくつかの種類があります。
多くは「焼き切るタイプの錆止め塗装」ですが、「焼き切らないタイプ(焼き切れないタイプ)」もありますし、「蜜蝋」が用いられていることもあります。
焼き切るタイプの場合には、空焼きすることで焼き切ります。
また、酸化被膜の形成にも空焼きが必要です。
錆びとは酸素を取り込んで酸化物になろうとする反応ですが、鉄を腐食させる赤錆と、鉄を安定される黒錆(酸化膜)とに分けられます。
- 赤錆:酸化第二鉄(Fe2O3)
- 黒錆:四酸化三鉄(Fe3O4)
黒錆は自然には発生しません。
黒錆を作るためには高温に熱するかメッキするかしかありませんので、鉄フライパンの場合には高温に熱する(600℃ほどにする)ことで黒錆を発生させます。
黒錆を作っておくと、腐食の原因になる赤錆が発生しにくくなります。
油をなじませるための空焼き
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鉄フライパンは、熱することで油なじみが良くなります。
これには、吸着水が関係しています。
鉄の表面には吸着水と呼ばれる水分が付着しており、吸着水が付着していると鉄に対する油の吸着量は著しく低下することが確認されています。
鉄フライパンは、熱してから油を加えます。
これは鉄に付着している吸着すりを蒸発させるためであり、冷えた状態のフライパンに油を入れても上手くなじんでくれないためです。
鉄フライパンは「煙が出るくらいまで(油の発煙点付近まで)熱してから油を加えましょう」と言われているのは、鉄の吸着水を減らして油なじみを良くするためなのです。
まとめ
鉄フライパンは、空焼きします。
購入直後には錆止め塗装の焼き切りと酸化被膜の形成のために空焼きしますし、その後は吸着水を飛ばすために空焼きします。
フッ素樹脂加工のフライパンでは厳禁とされる空焼きは、鉄フライパンにとっては必須工程と言えるのです。鉄フライパンに切り替えたばかりの方は、(根本的に使い方が異なりますので)注意が必要です。