糠床は、徐々にゆるくなっています。
これは、野菜から水分が抜けるためであり、「小さな糠床で野菜を漬けている場合」や「水分量の多い野菜を好んで漬けている場合」に起こりやすい問題です。
糠床の水分量は、微生物のバランスに影響を与えます。
- 水分量が多い:嫌気性微生物が増える。
- 水分量が少ない:好気性微生物が増える。
糠床には、大きく「乳酸菌」と「産膜酵母」が生育しています。
そして、乳酸菌は「酸素を好まない(嫌気性)細菌」であり、産膜酵母は「酸素を好む(好気性)細菌」です。
以下、詳細の説明をしていきます。
ゆるい糠床のメリットとは?
糠床の水分量が増えると、乳酸菌が増えます。
乳酸菌は糠漬け(糠床)の主役ともいえる微生物ですので、初期の熟成の進んでいない糠床にとっては大きなメリットとなります。
乳酸菌が増えるということは、糠床が熟成することです。
糠床は熟成が進むことで美味しくなります。
乳酸菌の生成する乳酸によってpHが下がりますので「腐敗しにくい糠床になる」「食欲をそそる酸味が加わる」などのメリットが得られるわけです。
多少ゆるい程度であれば、メリットが大きくなります。
ゆるい糠床のデメリットとは?
水分量の多い糠床は、「酸敗」と呼ばれる劣化の原因になります。
酸敗とは、酸味の強くなりすぎた糠床です。
酸味自体は糠床の良い特徴ですが、あまりにも酸っぱくなりすぎると「美味しくない」「急に腐ってしまうことがある」などのデメリットが生じます。
乳酸菌は、酸性に耐えられる微生物です。
しかし、あまりにもpHが低くなりすぎると「自らが生成した乳酸によって死滅してしまう」ことになりますので、急激な糠床の腐敗が起こります。
腐ってしまうわけです。
また、酪酸菌の問題もあります。
酪酸菌とは乳酸菌以上に酸素に弱い微生物であり、生育することによって無精香と呼ばれる「履き古した靴下のような臭い」が生じるようになってしまいます。
適切な水分量であれば天地返しをすることで防げますが、ゆるい糠床(水分量の多すぎる糠床)では空気層がなくなってしまいますので、天地返しをしても乳酸菌や酪酸菌の勢いを抑制することができなくなります。
善玉菌であっても、増えすぎれば悪影響になるのです。
どのようにして水っぽい糠床を改善するのか?
糠床の水分量を減らすには、いくつかの方法があります。
たとえば、「足し糠をする」「スポンジや布巾などで吸い取る」「専用の水抜き器を使う」などが一般的な改善策とされます。
基本的には、足し糠をおすすめします。
糠床容器が小さくて「これ以上は大きくしたくない場合」には適さない方法ですが、いちばん確実で問題の生じにくい方法です。
足し糠ができなければ、吸い取ることをおすすめします。
糠床に(コップなどを使って)底まで穴を開けておきますと、そこに水分がたまっていきますのでたまった水分をスポンジや布巾などで吸い取ることができます。
ゆるすぎる場合には穴を開けられませんが、多少ゆるい程度であれば問題ありません。

まとめ
ゆるい糠床では、乳酸菌の生育が良くなります。
しかし、ゆるすぎる場合には無精香の原因となる酪酸菌が増えてしまいますので、意図的にゆるくすることはおすすめしません。