麹甘酒は、コクのある甘味が特徴です。
これは、麹菌の生成する酵素(アミラーゼやプロテアーゼなど)が米の澱粉やタンパク質を分解するためであり、酸っぱさとは無縁の飲み物です。
しかし、作り方を間違えると酸味が生まれます。
酸味は、乳酸菌によって生成されます。
酸っぱい麹甘酒はお世辞にも美味しいものではありませんので、いかにして「乳酸菌を働かせないか?」が麹甘酒づくりのポイントとなります。
以下、詳細の説明です。
麹甘酒が甘くなる仕組み
麹甘酒は、酵素によって甘くなります。
「麹菌によって甘くなるのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、麹菌(アスペルギルス・オリゼー)は、麹甘酒として仕込まれた時点で(あっさりと)死滅してしまいます。
麹菌は、大量の酵素を生産しています。
酵素(アミラーゼ)には「澱粉を分解して糖に変える」という働きがありますので、麹菌が死滅した後でも澱粉を分解して糖が作られる(糖化される)わけです。
麹甘酒は、麹菌が生産した酵素の働きによって甘くなります。
麹甘酒が酸っぱくなる仕組み
麹甘酒が酸っぱくなるのは、乳酸菌の仕業です。
乳酸菌は、栄養豊富な場所で生育します。
麹甘酒の材料(米、米麹、水)というのは乳酸菌にとっても生育しやすい環境であるため、一度入り込んでしまうと勢いよく増殖することになります。
乳酸菌の生育の早さは侮れません。
また、乳酸菌は乳酸を生成することでライバルを減らします。
この乳酸こそが、麹甘酒を酸っぱくしてしまうのです。
乳酸菌は糖などを消費して乳酸を生成しますので、「甘くなくなる」「酸っぱくなる(酸味が生じる)」という典型的な麹甘酒の失敗が起こるわけです。
酸っぱい麹甘酒は美味しくありませんので、注意が必要です。
甘い麹甘酒の条件とは?
麹甘酒は、酵素だけを働かせることがポイントです。
そのためには、2種類の方法があります。
それが、「徹底的に消毒して乳酸菌を混入させないこと」と「低温殺菌によって乳酸菌を死滅させてしまうこと」です。
簡単なのは、後者です。
一般的な麹甘酒の作り方には、以下のような条件が提示されているかと思います。(※ヨーグルトメーカーを使用した作り方の例)
- 温度:55~60℃
- 時間:9~12時間
これは、乳酸菌を働かせずに糖化させるための条件です。
乳酸菌は細菌ですので、「55℃以上の温度でパスチャライゼーション(低温殺菌)することが可能」という特徴を持ちます。
低温調理と同様の原理です。
55~60℃という温度がポイントです。
温度が低すぎれば乳酸菌が活動してしまうリスクがありますし、あまりにも温度を上げすぎてしまうと酵素が失活してしまうことになります。
また、麹甘酒は好みの甘さになったら加熱処理をします。
これは、加熱処理をすることで「酵素を失活」させるためであり、甘くなりすぎないようにするための処置です。
このような作り方をすれば、酸味は生じません。

まとめ
麹甘酒の酸味は、乳酸菌によるものです。
乳酸菌は「糖などを消費して乳酸を生成します」ので、乳酸菌の生育している甘酒は「甘みが少ない」「酸っぱい」という特徴を持つことになります。
そのため、麹甘酒は55~60℃の温度域で作られます。