糠床のシンナー臭。その原因(仕組み)と改善方法について。

糠床からは、シンナー臭が漂うことがあります。

シンナー臭は改善できます。
まれに「糠床がダメになった」と考えて捨ててしまう方もおられますが、微生物のバランスが(多少)崩れているだけですので捨てる必要はありません。

原因を知ることが先決です。
仕組みも分からずに「粉からしを足す」などの対策を講じてしまうと、原因となっている微生物以外にも悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。

まずは、「なぜシンナー臭が生じるのか?」を知ることです。

乳酸菌と産膜酵母のバランス

シンナー臭は、産膜酵母が優位になることで起こります。

糠床には、大きく乳酸菌と産膜酵母が生息しています。
乳酸菌には「嫌気性で酸を生成する」という特徴があり、産膜酵母には「好気性でアルコールを生成する」という特徴があります。

  • 乳酸菌:酸を生成する
  • 産膜酵母:アルコールを生成する

両者のバランスは、糠床の善し悪しに直結します。
乳酸菌が増えすぎてしまえば「酸っぱい糠漬け」になりますし、産膜酵母が増えすぎてしまえば「アルコール(シンナー)臭い糠漬け」になってしまいます。

シンナー臭いと感じられるのであれば、産膜酵母が異常増殖している(もしくは乳酸菌の勢いが低下している)ということになります。

しかし、異なる原因によってシンナー臭が生じることもあります。
基本的には「産膜酵母がアルコールを生成する」と考えて間違いはないのですが、乳酸菌の中にもアルコール(エタノール)を生成するものもあるのです。

また、耐塩性と嫌気性の特徴を持つ酵母が生育している可能性も否定できません。

アルコールなのにシンナー臭?

微生物の中には、アルコール(エタノール)を生成するものがあります。
しかし、「アルコールを生成する」というのは、(複雑な仕組みを)分かりやすく説明するために簡略化しているにすぎません。

実際には、様々な有機化合物が生成されています。

代表的な産膜酵母は、「ピキア・アノマラ」などです。
ピキア・アノマラは「酢酸エチル高生産性酵母」ですので、少量であれば「パイナップルに似た果実臭」ですが、多量になれば「シンナー臭」になります。

また、酢酸イソアミルやイソアミルアルコールなど、多数の有機化合物が生成されています。

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糠床の水分量と微生物のバランス

糠床の水分量は、微生物の生態系に影響を与えます。

基本となる糠床の水分量は約60%です。
60%の水分量とは「握ったときに水分がにじみ出てくる」くらいであり、それよりも多すぎれば乳酸菌が強くなりますし、少なすぎれば産膜酵母が強くなります。

  • 乳酸菌:嫌気性(空気があると生育できない)
  • 酵母:好気性(空気が遮断されるとアルコールを多く生成する)
  • 産膜酵母:好気性(空気がないと生育できない)

糠床に生育している微生物は、家庭によって異なります。

たとえば、一言に乳酸菌と言っても「アルコールを生成しないホモ型乳酸発酵」をするものが大半を占めている糠床もあれば、「アルコールを生成するタイプ1のヘテロ型乳酸発酵」をするものが多く存在している糠床もあります。

また、酵母(イースト)が加えられている糠床であれば、水分量が増えるほどにアルコールが生成されやすくなります。

シンナー臭を改善するための方法

シンナー臭を改善するためには、いくつかの方法があります。

たとえば、産膜酵母が原因の場合は「水分量を増やして空気を追い出す」ことが効果的ですし、乳酸菌や酵母が原因になっている場合には(アルコールは糖が分解されることで生じますので)「糖質を含む食材を入れない」ことが効果的です。

C6H12O6(ブドウ糖)→2C2H5OH(エタノール)+2CO2(炭酸ガス)+放出エネルギー

シンナー臭の原因が産膜酵母である場合

産膜酵母の勢いが強い場合は、空気を追い出します。
見極めるポイントとしては「すぐに糠床表面に白い膜が張ってしまう」「糠床の水分量が少ない」などの場合には産膜酵母が原因となっている可能性が高いと判断できます。

天地返し後は、しっかりと空気を抜くことです。

また、水分量を増やすことも効果的です。
水分量を増やせば糠床内部の空気は追い出される(空気に触れている面積が少なくなる)ことになりますので、産膜酵母は抑制されます。

その際、塩分量には注意してください。
糠床の腐敗を防いでいるのは「酸性pH」と「塩分濃度」ですので、6-8%ほどの塩分濃度を維持できなければ腐敗のリスクが高まります。

水分を足す際には、食塩も足さなければなりません。

糠床(糠漬け)からアルコール臭が漂う理由。熟成による香味の変化。糠床の水分量。多すぎても少なすぎても糠漬けの味に影響する理由。

シンナー臭の原因が乳酸菌や酵母である場合

乳酸菌や酵母が原因になっている場合は、水分量を減らします。
見極めるポイントとしては「産膜酵母が目立たない(すぐに白い膜が張ってしまうようなことがない)」「酸味が強い(pHが低い)」「糠床の水分量が多い」などです。

そのような場合には、糠床の水分量を減らします。
乳酸菌や酵母は、空気が遮断されることで活発にアルコールを生成しますので、糠床の水分量を減らすことで空気層を増やすことが効果的なのです。

おすすめは、足し糠です。
あまりにも水分量が多い場合には布巾(もしくはスポンジ)などで余計な水分を吸い取り、足し糠をすることで固めの糠床に調節します。

糠床に足し糠をする理由。新鮮な米糠は乳酸菌に欠かせない栄養。

まとめ

糠床のシンナー臭は改善できます。
しかし、「乳酸菌(または酵母)が原因なのか?」「産膜酵母が原因なのか?」によって対処法は変わってきますので、原因の見極めがポイントとなります。

見極める方法としては、「糠床が緩い」「産膜酵母による白い膜が張らない」などであれば乳酸菌(または酵母)が原因になっている可能性が高く、「糠床が固い」「すぐに白い膜が張ってしまう」などであれば産膜酵母が原因になっている可能性が高いと判断できます。

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