ぬか床が腐る理由。良かれと思って行いがちな致命的な間違い。

手入れに慣れていないと、ぬか床を腐らせてしまうことがあります。

腐ったぬか床は、ひどい悪臭を発します。
あまりにもひどい悪臭を発しますので、「捨て方に困る」「触りたくもない」「もう、ぬか漬けはこりごりだ」などの経験をされた方は少なくないはずです。

少なくとも、私には経験があります。

では、なぜぬか床が腐るのか?
ぬか床を腐らせないためのポイントに関して、順を追って説明していきたいと思います。

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ぬか床が腐らない理由

ぬか床は、塩分濃度と酸性pHによって腐敗を防いでいます。
ある程度の塩分濃度と酸性pHを維持できているからこそ腐らないのであって、これらを維持できなければ「たちまち腐敗菌が増えてしまう」ことになります。

  • 塩分濃度:浸透圧による防腐効果
  • 酸性pH:中性pHを好む雑菌を死滅させる

ぬか床が腐るというのは、いずれかのバランスが崩れるために起こります。

塩分濃度の低下で腐りやすくなる仕組み

塩分濃度が低くなると、ぬか床は腐りやすくなります。

食塩には、防腐効果があります。
これは、浸透圧により細胞内の水分が吸い出されてしまうためであり、8%ほどの塩分濃度になると「繁殖できる微生物が限られてくる」ことになります。

ぬか床に生育している微生物の多くは、耐塩性です。
塩分濃度が維持されているからこそ耐塩性の乳酸菌や産膜酵母が生育できるのであって、塩分濃度が低下してしまえば「腐敗菌の繁殖に負けてしまう」ことにもなりかねません。

腐るというのは、腐敗菌が優位になってしまった結果です。

酸性pHにすることで微生物を選別できる?

乳酸菌は、大量の乳酸を生成してpHを下げます。

理想的なぬか床の酸度は、pH4.3前後です。
腐敗菌や病原菌の多くは「中性から(やや)塩基性のpHを好みます」ので、乳酸菌の生育が進んでいるぬか床では生育できません。

酸性pHが維持されるからこそ、ぬか床が腐りにくくなるのです。

しかし、産膜酵母は乳酸を消費します。
産膜酵母とはぬか床の表面に張る白い膜の正体であり、「乳酸を消費してアルコールを生成する」という働きがありますので、天地返しによって異常増殖を抑えなければいけません。(関連記事:ぬか漬けに生じるアルコール臭の仕組み

天地返しは、腐敗防止にもひと役買っているのです。

水っぽいぬか床が腐りやすいのは塩分濃度の低下が原因

ぬか床は、水っぽくなっていきます。
これは野菜を漬けることで(浸透圧の関係で)野菜の水分が吸い出されてしまうためであり、そのままではドロドロのぬか床になってしまいます。

水分量が増えると、相対的に塩分濃度も低下します。
塩分濃度の低下は腐敗することにつながりますので、適宜、足し糠(新鮮な糠と食塩を加えること)によってバランスを保つ必要があります。(関連記事:ぬか床への足し糠

また、近年のぬか床レシピは「減塩傾向」にあります。
以前であれば8%ほどの塩分濃度が主流でしたが、最近では「6%以下の塩分濃度」にしているぬか床も珍しくはありません。(関連記事:基本的なぬか床の作り方

そのようなレシピの場合には、より一層の注意が必要です。

うま味を加えるタンパク質には要注意

タンパク質が分解されると、うま味が生じます。
そのため、レシピによっては「煮干しを加える」「鰹節を加える」「きな粉を加える」などと書かれていることも少なくありません。

しかし、タンパク質を加えるとぬか床が腐りやすくなります。
これは、(微生物によって)タンパク質が分解される過程で窒素を含むアミンやアンモニアが発生するためであり、pHが塩基性に傾いてしまって腐敗菌の繁殖しやすい環境になるためです。

良かれと思ってやったことで、ぬか床を腐らせかねません。

基本的に、積極的にタンパク質を加えることはおすすめしません。
米糠には13.4%のタンパク質が含まれていますので、手入れの行き届いているぬか床であれば自然にうま味は強くなっていきます。

わざわざリスクを負う必要はありません。
どうしても加えたい場合には、少しだけにしてください。

まとめ

ぬか床が腐ってしまうのには理由があります。
それが、「塩分濃度の低下」と「pHの上昇」であり、このバランスさえ保たれていればぬか床を腐らせてしまうことはありません。

ついついやってしまいがちな間違いが、タンパク質です。
うま味を加えるために良かれと思って煮干しや鰹節を加える方は少なくありませんが、タンパク質を増やし過ぎると腐りやすくなってしまいますので注意が必要です。

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タベル

厨房料理人(プロ)ではありません。普通の台所に立つ台所料理人(自炊をしている人)です。調理や調理道具が好きで、多くの書籍を読みつつも試作や実験を繰り返しています。このブログは、料理に関する「コツ」のようなものを体系的にまとめるために運営しています。