コーヒー豆(焙煎豆)は、生鮮食品のように扱われます。
もちろん、コーヒー豆は生鮮食品ではありません。
しかし、焙煎豆が吸湿してしまえば数日で(違いが分かるほどに)劣化しますし、常温で2カ月も置いておけば分かりやすく脂肪酸が酸化していきます。
コーヒー豆の管理には、手間がかかるのです。
また、コーヒーは嗜好品です。
嗜好品だからこそ「美味しく飲めること(賞味期限)」が重要であり、「飲んでも問題ないこと(消費期限)」とは意味合いが異なることになります。
以下、詳細を説明してきます。
コーヒー豆(焙煎豆)が劣化する仕組み
まずは、焙煎豆が劣化する仕組みから説明していきます。
焙煎豆は、時間の経過とともに劣化します。
はじめは美味しかったコーヒー豆であっても、時間の経過とともに「酸っぱくなる」「良い香りがなくなる」「油臭さを感じるようになる」などの変化が起こります。
主な原因は、3つです。
- 加水分解によるpHの低下
- 香り成分や炭酸ガスの消失
- 油脂分を構成する脂肪酸の酸化
これらの劣化は、保管方法によってある程度は防げます。
しかし、家庭での保存に限界があることも事実であり、開封後は「常温で2週間」「冷凍(もしくは冷凍)で半年ほど」が限界だと考えられています。
以下、それぞれの項目を説明します。
加水分解によるpHの低下
コーヒー豆は、吸湿することで劣化します。
これは、加水分解が原因です。
焙煎豆にはクロロゲン酸ラクトリンやキナ酸ラクトリンが含まれますが、これらは水分子と反応することで容易にクロロゲン酸やキナ酸に変化します。
この反応を加水分解と呼びます。
pHが低下するために、酸味が強くなります。
加水分解はコーヒー豆が吸湿してしまうことで起こる反応ですが、気密容器に入れておかないと数日のうちに酸っぱくなってしまう可能性があります。(関連記事:コーヒー豆の保管方法)
また、抽出後のコーヒーも同様です。
コーヒーメーカーなどの保温機能を使っていると、数十分ほどで違いが分かるほどの変化が起こることになります。(関連記事:水筒のコーヒーが美味しくない理由)
香り成分や炭酸ガスの消失
コーヒー豆には、香り成分と炭酸ガスが含まれています。
これらの揮発性成分は時間の経過とともに抜けていきますので、「特徴的な香りが失われる」「お湯をかけても膨らまなくなる」などの問題が生じやすくなります。(関連記事:コーヒーが膨らまない原因)
目安としては、常温で2週間ほどが限度です。
炭酸ガスが消失すると、コーヒーの味が落ちます。
コーヒーの粉を膨らませている正体は「炭酸ガス」であり、炭酸ガスによって生じる泡には「雑味を吸着する」という働きがあるためです。(関連記事:コーヒーに浮かぶ泡の働き)
この仕組みは、気泡分離と呼ばれています。
油脂分を構成する脂肪酸の酸化
脂肪酸は、空気に触れることで酸化します。
これは、脂肪酸が空気に触れることで不飽和度の高い脂肪酸となり、さらに酸化されることで低級脂肪酸に分解されることによる劣化です。
これによって、酸敗臭(ランシッド)が生じるようになります。
しかし、コーヒー豆の酸化には時間がかかります。
通常、常温保存でも酸敗臭を感じられるようになるまでには2カ月弱ほどの時間を要しますので、過度に酸化を心配する必要はありません。
まとめ
コーヒー豆(焙煎豆)の賞味期限は、常温で2週間ほどです。
2週間を超えてくると「香りが失われていく」「膨らみにくくなっていく」などの問題が生じやすくなります。
このことからも、2週間分は常温保存をし、それ以外は「気密容器に小分けにして冷凍庫(もしくは冷蔵庫)に入れておく」ことがスタンダードな保存方法となっています。
いずれにしても、半年以上の保存はおすすめできません。