パイ生地の失敗例として、膨らまないという問題があります。
パイ生地が膨らまないのには、2つの原因が考えられます。
ひとつめが「タンパク質の多い小麦粉を使っている」ことであり、ふたつめが「材料の温度が上がってしまっている」ことです。
- グルテンが多く生成されている
- バターが溶けてしまっている
パイ生地は、グルテンの比率と温度がポイントになります。
以下、詳細の説明です。
グルテン生成を避ける理由
一般的に、パイ生地は薄力粉でつくられます。
これはグルテンの生成を避けるためであり、グルテンの多い生地は「粘弾性をもって膨らみにくくなる」という特徴を持つことになります。
グルテンは、主に2種類のタンパク質によって生成されます。
- グルテニン:バネ状の弾力
- グリアジン:流動的な粘性
グルテンは、グルテニンとグリアジンが練られたものです。
バネ状の弾性を持つグルテニンの間に、粘性を持つグリアジンが入り込むことによって「粘弾性のある生地」になるというわけです。
しかし、パイ生地はグルテンを好みません。
多くのグルテンが生成されてしまうと「パイ生地が膨らまなくなってしまう」ことになりますので、薄力粉を練らないようにして作ることがポイントとなります。

生地の温度を上げないこと
材料の温度が上がると、膨らまなくなります。
パイ生地が膨らむのは、空気の入り込む層ができているためです。
しかし、材料が温まってしまうと「グルテンの粘りがでてしまう」「溶けたバターが小麦粉の粒子の隙間を埋めてしまう」などの問題が生じます。
そのような環境でつくられたパイ生地は、(重く、しっとりしていて)膨らみにくいという特徴を持つことになります。
サクッとしたパイ生地をつくるためには、温度管理が重要です。
理想をいえば、「材料を冷やしておく」「室温は低めに設定しておく」「作業台には大理石を用いる」などの条件が求められます。
できるところから、改善していくことをおすすめします。

まとめ
パイ生地が膨らまない理由には2点が考えられます。
それが、「粘弾性を持つグルテン(小麦粉のタンパク質含有量)の影響」と「生地を作る過程での温度管理」の2点です。
もちろん、上記2点がすべてではありません。
しかし、多くの「膨らまない」という失敗の背景には、「グルテン」と「温度」のいずれかが関わっていると考えて差し支えありません。